会う前に、話題をいくつか用意していったと思います。
それでも、ひとつ話すたびに会話が止まった。
用意していったのに続かなかったのだから、まだ数が足りなかったのだと考える。
次はもっと集めよう、と。
先に結論をお伝えします。話題を用意するほど、会話は止まります。
原因は在庫不足ではありません。用意した話題を使おうとすること、それ自体です。
理由は質問の種類にあります。
スピードデートの会話を分析した研究が、続く質問と続かない質問をはっきり分けています。
結論だけ先に
- 原因/話題の数ではなく、ひとつの話題を掘る前に次へ移っていること
- 掘る3手/事実を聞く(10秒)→ 自分の感想を返す(5秒)→ 感想に出た言葉を聞き返す
- 上限/1つの話題につき1周まで。2周すると詰問になります
- 沈黙/危険なのは相手が話し終えた直後だけ。3秒で戻します
- 設計/横並びの席、90分、1軒目で終える
用意した話題は、必ず「切り替える質問」になります

質問には2種類あります。
相手の答えをさらに掘る質問と、別の話へ切り替える質問です。
用意していった話題は、後者にしかなりません。
相手が何を答えるかは、用意した時点ではわからないからです。
つまり手元にあるのは、相手の返事と無関係に成立する質問のリストです。
使えば使うほど、話題は切り替わり続けます。
掘る質問は、事前に用意できません。相手の答えを聞いていなければ、作れないからです。だから掘る質問は、聞いていた証拠になります。
私の失敗
私は以前、移動中にスマホで話題を5つメモしていました。
仕事、出身、休日、好きな食べ物、最近見たもの。
結果として何をしていたかというと、相手が答え終わるたびに次のメモへ進んでいました。
会話ではありません。面接です。
相手からすると、答えた内容がどこにも拾われないまま次の質問が来ます。話しているのに、聞かれていない感覚だけが残ります。
掘る質問と切り替える質問は、結果が違います
Huangらは2017年、初対面の会話とスピードデートを対象に、質問の出し方と好意の関係を調べています。
スピードデートの調査は110人・2,000回を超える会話が対象です。
この研究で分けられたのが、掘り下げ質問と話題転換の質問です。
2回目のデートの申し出と関係が見られたのは、前者でした。
| 掘る質問 | 切り替える質問 |
|---|---|
| 相手の答えの中の言葉を使う | 相手の答えと無関係に出せる |
| 聞いていないと作れない | 聞いていなくても作れる |
| 「その現場、何人くらいなんですか」 | 「休みの日は何してるんですか」 |
| 話題が1つのまま深くなる | 話題が増えて、どれも浅いまま終わる |
右の列を10個並べたものが、事前に用意した話題リストです。
数を増やしても、列は移りません。
相手に話させるのは、方向としては正しい
人は発話の30〜40%を、自分の主観的な経験を伝えることに使っているとされます。
話す側になれる時間は、それだけ求められているということです。
ですから「相手に話してもらえ」という方向は間違っていません。
間違っているのは、そのために質問の数を増やすという手段のほうです。
質問を増やして話させようとする
相手が話す総量は増えません。答えるたびに話題が切り替わり、一つひとつが短くなります。
一つの話題に留まって話させる/同じ話題の中で聞き返すだけで、相手の発話は伸びます。質問の総数はむしろ減ります。
掘る3手|秒数まで決めておきます

掘るといっても、深い話を引き出す必要はありません。
手順は3手で固定します。
STEP 01
事実をひとつ聞く(10秒)
相手の答えに出てきた固有名詞や数字を、そのまま拾います。
「実家が長野」と言われたら「長野のどのあたりですか」。感想を求めず、事実だけを聞きます。
STEP 02
自分の感想を返す(5秒)
ここで自分の話を2文だけ入れます。
「冬は雪すごいですよね。私は一度だけ行って、装備が甘くて失敗しました」。長くしません。
STEP 03
相手の言葉を聞き返す(15秒)
STEP01の答えの中に出てきた言葉を、質問に変えます。
「雪、慣れてると逆に平気なんですか」。ここまでが1周です。
1つの話題につき、この3手は1周までです。2周以上続けると、掘るという行為は詰問に変わります。
STEP02で自分の話を挟むのは、形式を会話のまま保つためです。
質問だけを重ねると、内容がどれだけ良くても取り調べになります。
私はこの3手に変えてから、ひとつの話題で15分もったことがあります。
用意していた話題は、その日ひとつも使いませんでした。
沈黙は、気まずいと感じる前にもう効いています

Koudenburgらは2011年、流れていた会話に短い沈黙を差し込む実験を行っています。
差し込まれた側には、拒絶された感覚と否定的な感情が生じました。
注目すべきは2つ目の実験です。
参加者が沈黙に気づいていない場合でも、影響は出ていました。
この実験は集団会話を想定した設計です。1対1のデートにそのまま当てはめることはできません。ただし「沈黙は、本人が気まずさを自覚する前から効いている」という構造は、そのまま参考にできます。
つまり「沈黙を怖がるな」という助言は、方法として機能しません。
怖がるかどうかは、結果に関係がないからです。
危険な沈黙と、無害な沈黙を分けます
危険な沈黙
相手が話し終えた直後に生まれる沈黙。流れが切れた場所にできるため、直前に話した側が「聞き流された」と受け取ります。
無害な沈黙/移動中、食事に口をつけている間、店員が来ている間。流れが切れていないので、埋める必要はありません。
埋めるべきなのは前者だけです。
相手が話し終えたら、3秒以内に何か返します。
このとき新しい話題を出してはいけません。直前の話題に戻します。沈黙を埋めるために話題を切り替えると、沈黙は消えて、聞いていない印象だけが残ります。
私は沈黙が怖くて、相手が話し終えた瞬間に別の話を出す癖がありました。
沈黙は消えていましたが、相手の話はどれも途中で終わっていました。
会う前に決めておくこと3つ
話題を用意する時間があるなら、そこに使ってください。
会話が続くかどうかは、座った時点でかなり決まっています。
- 横並びの席を取る/正面に座ると視線が外せません。沈黙が生まれた瞬間の逃げ場がなくなります。カウンターかL字を、予約時に指定します。
- 90分で終える/2軒目を作らないと決めておきます。話題が尽きて解散するのと、余っている状態で解散するのとでは、次の連絡のしやすさが変わります。
- 香りの量を落とす/横並びは距離が近くなります。正面に座るより、香りは強く届きます。
3つ目は見落とされがちです。
自分でちょうどよく感じる量は、その距離ではすでに強すぎます。
よくある質問
掘る話題が、相手にとって面白くなかったらどうしますか
相手が自分で出した話題なので、面白くないということは起きにくいです。掘る対象は、こちらが選んだ話題ではなく、相手の口から出た言葉に限定してください。
相手が一言しか返してくれません
その一言の中の名詞を拾ってください。「そうですね」しか返ってこない場合は、質問が「はい/いいえ」で終わる形になっています。「どのあたり」「何人くらい」に変えると、事実が返ってきます。
自分の話はどれくらいしていいですか
1回につき2文までです。相手7・自分3を目安にしてください。ただしゼロにはしないでください。自己開示が一方通行だと、相手の側に「話しすぎた」という後味が残ります。
その日の会話は弾んだのに、次に繋がりませんでした
弾んだかどうかと、次に会いたいかどうかは別の判断です。会話の盛り上がりは、その場の楽しさしか示しません。掘る質問が効くのは、盛り上がりではなく「聞かれたことを覚えていてもらえた」という感覚が残るからです。
緊張して、その場で3手を思い出せません
覚えるのは1つだけで足ります。「相手が今言った言葉を、もう一度使う」。これだけで、3手のうち1手目と3手目は自動的に成立します。
まとめ
会話が続かないのは、話題を集めなかったからではありません。
集めた話題を、律儀に使おうとしたからです。
- 話題は用意しない。使うのは相手の口から出た言葉だけ
- 事実を聞く(10秒)→ 感想を返す(5秒)→ 言葉を聞き返す(15秒)
- 1つの話題につき1周まで。2周は詰問
- 相手が話し終えた沈黙だけ、3秒以内に埋める
- 埋めるときに新しい話題を出さない。直前の話題に戻す
- 移動中・食事中の沈黙は埋めない
- 横並びの席、90分、1軒目で終える
- 近い距離では香りの量を落とす
用意した話題は、相手のいない場所で作ったものです。目の前にいる人から作った質問には、どうやっても勝てません。
覚えていてもらえるのは、
うまく話した男ではありません。
参考文献
Huang, K., Yeomans, M., Brooks, A. W., Minson, J., & Gino, F. (2017). It Doesn’t Hurt to Ask: Question-Asking Increases Liking. Journal of Personality and Social Psychology, 113(3), 430–452.
Koudenburg, N., Postmes, T., & Gordijn, E. H. (2011). Disrupting the flow: How brief silences in group conversations affect social needs. Journal of Experimental Social Psychology, 47(2), 512–515.
Tamir, D. I., & Mitchell, J. P. (2012). Disclosing information about the self is intrinsically rewarding. PNAS, 109(21), 8038–8043.


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