香水を2本持っていて、重ねてもいいものか。
あるいは一度試して、なんとなく失敗した気がしている。そのような悩みを持っている方へ。
先に結論をお伝えします。重ね付けは、今日から始めるものではありません。あなたはもう、何層も重ねています。
香水は1層目ではありません。シャンプー、ボディソープ、整髪料、制汗剤、柔軟剤。数えると、香水を出す前にすでに5つ前後が乗っています。
だから重ね付けの話は、組み合わせから始まりません。数から始まります。
結論だけ先に
- 私は勧めません/香水を2本重ねる必要のある場面が、日常にありません
- 理由/失敗の原因は組み合わせではなく、量です
- 数値/オードトワレ2本の賦香率は、オードパルファム1本を超えます
- 先にやること/足すのではなく、5層のうち2つを無香料に替える
- 期間/置き換えて1週間。それだけで香水の適量が変わります
香水は、6層目です

朝、家を出るまでに身につけている香りを数えてみてください。
- シャンプー
- コンディショナーまたはトリートメント
- ボディソープ
- 洗顔料・髭剃り後の化粧水
- 整髪料(ワックス・バーム・スプレー)
- 制汗剤・デオドラント
- 洗濯洗剤と柔軟剤(シャツから一日中立ち上がります)
無香料を選んでいなければ、この7つはすべて香りを持っています。
多い人で7層、少なくても4〜5層です。
香水は1層目ではありません。多くの場合、6層目です。そこにもう1本足す行為が「重ね付け」と呼ばれています。
層は、意図した順番では届きません
香水を2本重ねるとき、人は順番と部位を設計します。先に重い香り、後から軽い香り、というように。
ですが実際に相手の鼻に届くのは、設計した2本ではありません。頭部から立つ整髪料、襟元から立つ柔軟剤、脇の制汗剤を含めた全部です。
しかもそれぞれ立ち上がる高さが違います。整髪料は頭、柔軟剤は上半身全体、香水は手首。相手の鼻の高さに何が届くかは、こちらでは決められません。
失敗の原因は、組み合わせではなく量です
賦香率で見る
香水は、香料がどれだけ入っているかで種類が分かれます。この割合を賦香率と呼びます。
| 種類 | 賦香率の目安 | 持続の目安 |
|---|---|---|
| オーデコロン(EDC) | 3〜5% | 1〜2時間 |
| オードトワレ(EDT) | 5〜10% | 3〜4時間 |
| オードパルファム(EDP) | 10〜15% | 5〜7時間 |
数字は資料によって幅があります。ここでは香水専門メディアとブランド公式の記載を採りました。上下1〜2%の差は本筋を変えません。
ここで計算してみます。オードトワレを2本重ねると、賦香率の合計は10〜20%です。
軽い香水を2本重ねた時点で、濃度としてはオードパルファム1本を超えています。「軽いもの同士なら安全」は、数字の上で成立しません。
香りが崩れるのは、後から起きます
香水は時間とともに立ち上がる成分が入れ替わるように設計されています。つけた直後と3時間後では、香りの構成が変わります。
2本重ねると、この時間差が二重になります。つけた瞬間に相性が良く感じても、3時間後にどう混ざるかは、その場では確認できません。
そして人と会うのは、たいてい3時間後です。
増えた分は、自分には分かりません

鼻は、同じ香りを嗅ぎ続けると感じにくくなります。数分で起きます。
だから2本目を足した直後に「ちょうどよくなった」と感じるとき、比べているのは1本目に慣れきった状態です。
基準そのものが下がった後で、上乗せしています。
私は、会食の席で気づきました
数年前、同じブランドのオードトワレを2本、手首と首筋に分けてつけて出かけました。相性は良いはずの組み合わせでした。
店に入って15分ほどで、向かいの席の相手が椅子を半分うしろに引きました。会話は普通に続きましたが、距離だけが戻りませんでした。
私は最後まで、自分の香りを強いと感じていません。
感じられていたら、その場で直せていたはずです。
柔軟剤ひとつでも、相談は起きています
1層でも届いている
国民生活センターには、柔軟仕上げ剤のにおいに関する相談が毎年130〜250件程度寄せられています。2014年度以降で928件、うち594件(64%)は体調面の申し出を含むものでした。
相談が多いのは6月から9月です。気温と汗で、香りの立ち方が変わる時期にあたります。
香りの感じ方には個人差があり、この件数がそのまま自分に当てはまるわけではありません。ここで見ておきたいのは1点だけです。香水ではなく、柔軟剤という1層の話であること。
洗濯という、香りをまとっている自覚が最も薄い工程です。そこですでに、届く人には届いています。
その上に整髪料と制汗剤が乗り、さらに香水が2本乗る。
これが「重ね付け」と呼ばれているものの実態です。
それでも香りを設計したいなら、引いてから足す

STEP 01
2つを無香料に替える
ボディソープと制汗剤の2つを無香料に替えます。この2つを選ぶのは、面積が広く、一日中肌の上に残るからです。どちらも無香料タイプが1,000円前後で買えます。
STEP 02
柔軟剤を弱いものに替えるか、外す
柔軟剤は香りの強さの目安がパッケージに表示されています。最も弱い区分に替えるか、シャツだけ柔軟剤なしで洗ってください。襟元は、相手の鼻に最も近い位置です。
STEP 03
1週間おいてから、香水を1本つける
置き換えて1週間たってから、いつもの香水をいつもの量でつけてみてください。同じ量が、はっきり強く感じられます。層が減った分だけ、1本の輪郭が出てきたからです。
これが本当の意味での設計です/足して複雑にするのではなく、引いて1本を立たせる。使う香水は今持っているもので足ります。
層を減らさずに2本目を足す
6層の上に7層目を乗せることになります。どれだけ相性の良い2本でも、届くのはその2本ではありません。
なぜ私は、重ね付けを勧めないのか
理由は好みではありません。届く距離が変わるからです。
重ねた分だけ、香りは遠くまで届きます。届く範囲が広がるほど、届けたい相手を選べなくなります。
すれ違った人、隣の席、エレベーターに乗り合わせた人。全員に同じだけ届きます。
そして本来届けたい相手は、たいてい半径1メートルの内側にいます。
その距離に届かせるために、部屋の反対側まで届く量は要りません。
濃度ではなく、拡散で考える
液体の香水はアルコールで広がります。だから量を足すと、濃さではなく半径が伸びます。
油性の練り香水は、この広がり方が違います。量の調整も、指ですくう時点で目で見えます。
近い距離に置いておくという設計に向いているのは、こちらです。
よくある質問
同じブランドの2本なら、重ねても大丈夫ですか。
相性は良くなります。ただし総量は変わりません。同じブランドで揃えると解決するのは「混ざり方」だけで、「濃度が倍になる」ほうは解決しません。
上半身と下半身に分ければ、混ざりませんか。
つけた本人の周囲では混ざります。分けて置いても、体温で立ち上がった香りは同じ空気の中で合流します。分離できるのはつけた瞬間だけです。
香りが1〜2時間で消えるので、足したくなります。
消えたのではなく、自分の鼻が感じなくなっただけの可能性が高いです。オードトワレでも3〜4時間は続きます。判断は時計でしてください。鼻ではできません。
無香料に替えると、清潔感がなくなりませんか。
逆です。清潔感は香りの強さではなく、においが混ざっていないことで伝わります。層が少ないほど、何の香りかが分かりやすくなります。
練り香水と液体の香水を重ねるのはどうですか。
勧めません。形状が違っても、乗る層はやはり2つです。練り香水を使う利点は量を目で確認できることなので、上に液体を重ねると確認できない分が戻ってきます。
まとめ
- 香水は1層目ではない。多くの場合6層目
- オードトワレ2本の賦香率は、オードパルファム1本を超える
- 相性を揃えても、総量は減らない
- 2本目を足した直後の「ちょうどいい」は、慣れた後の基準
- ボディソープと制汗剤を無香料に。1週間で適量が変わる
- 柔軟剤は襟元から立つ。シャツだけでも外す価値がある
- 足すと濃くなるのではなく、半径が伸びる
香りを足すのは、いつでもできます。
引くのは、足す前にしかできません。


コメント